『旅の効用 人はなぜ移動するのか』(ペール・アンデション 著、畔上司 訳)の要約をflier(フライヤー)で読んだ。
スウェーデンで最も著名な旅行誌『ヴァガボンド』の共同創業者が書いたエッセイ集らしい。
普段ならこういう本は手に取らないが、読んでみると面白く、学びが多かった。
普段読まないジャンルに気軽にチャレンジできるのはflier(フライヤー)のメリットである。
旅をすると人は成熟する
ドイツのある心理学研究所のチームがこんな調査をしたらしい。
「旅に出れば人は変わるか?」
調査方法は、旅に出るまでに被験者の「開放性、友好性、思いやり、誠実さ、感情の安定度、外向性」をテスト。
そして、旅を終えた後に、それらの指標がどのように変化したかを調べる。
実験結果は以下の通り。
彼らは、予見不可能な出来事に遭遇しても簡単にはストレスを感じなくなっていた。まるで、すべてをコントロールしなくても人生はうまく運んでいくことを学んだようだった。旅の前までは当たり前と思っていた事柄について新しい見方をするようになり、異なる見方も受けとめられるようになった。他人に対する思いやりも深くなっていた。
旅によって人は成熟した。
とくに共感したのは「すべてをコントールしなくても人生はうまく運んでいくことを学んだ」という部分。
社会人になって学んできたことは、「なんでもコントロールする方法」に近いかも知れない。
本来コントロールできないものまでコントロールしようとするからストレスがたまる。
コントロールせず、流れに身をまかせるような生き方に憧れる。
旅をすると、いろんな成長ができるんだな。
そしてその理由も考えてみる。
自分を知るということ
「自分探しの旅に出る」みたいなことをよく耳にする。
これがどういうことなのか、少し分かった気がした。
著者に対して、ガールフレンドは言う。「あなたは異文化の中に入って初めて、自分を見つめ始めることができるのよ。別の文化に反応することによって、自分が何者か、自分がどこから来たのかを理解する。異文化の人たちから奇妙だと思われることによって、あなたの自画像は正確になっていく。旅は鏡のようなものよ。そして最高のセラピー」と。
異文化を知れば知るほど、自分の文化との「比較」が可能になる。
「比較」をすることで、これまで自分の内側にあったものがより魅力的に見えたり、逆に、これまでは自分の内側に存在していなかった新しいものに魅了されたりする。
「他」と「自」の違いを知り、その違いを拒絶するのではなく、受け入れることで人として成熟できるのではないか。
旅ができない人はどうすればいいのか
旅が人としての成長を助けてくれることは分かってきたが、実際問題、旅ができる環境の人は少ない。
ではどうすればいいのか?
旅が人を成長させるステップを整理すると、以下のようになる。
-
- 他を知る
- 自分と比較し差を知る
- 差を受け入れる
つまり、なんとかして「他を知る」ことがスタート。
「旅」でなくてもよい。「本を読む」「会ったことがない人に会う」「行ったことがないところに行く」などでもよいと思う。
実際に、著者の伴侶は旅に出ずに学びを得ている。
ちなみに著者の伴侶は旅をしない人であり、「旅をせずに本を読めば充分だ。そうすれば心の中で旅することができる」と考えているという。これは本書が多くの人に愛されているもう一つの理由を示唆していないだろうか。旅をしない人にとっても、見知らぬ風景や風土、旅人の喜怒哀楽は単純に興味をそそるということだ。
不安の正体
知らないことを「知る」ことで不安を解消できる。
不安は、世界を知ることで和らげられる。憎悪に発展する可能性のある不安の9割は、見知らぬ事柄に対する無知が原因である。異文化に対する偏見や、よそ者を排除したい衝動は、故郷以外の世界を知らないことに由来しているのだ。
今思えば、たしかにそうだ。
「やる前は不安だけど、実際やってみたらなんてことなかった」ということは多い。
これまで知識をつけることや、新しい体験をすることは、単純に楽しいからやってきた。
「不安を解消する」という効果についてはまったく意識していなかった。
「不安」の正体が「知らないこと」だとしたら、それは、知ればいいことなので、乗り越えられるような気がする。
また「不安」を感じたときは、「この先に進めば新しいなにかを知ることができる」と思うと前向きになれる。